「取引高が多いFX会社を選ぶと、注文が集中しやすく約定拒否やスリッページが起きにくい傾向があります。」取引高は、口座数や預かり資産とは異なり、実際にどれだけの売買が行われているかを示す数値です。この記事では、FX口座比較サイトで紹介されることが多い主要12社について、各社が公式に開示している取引高データを調べ、開示状況ごとに整理しました。
FX会社選びで「取引高」を確認する意味
取引高(出来高)は、一定期間にそのFX会社で成立した売買代金や取引数量の合計を指します。口座開設数や預かり資産が「どれだけの顧客を抱えているか」を示す指標であるのに対し、取引高は「実際にどれだけ取引されているか」という活発さを映す数値です。
取引高が多いFX会社では、注文が集中しやすい分だけ市場の厚みが確保されやすく、レートの提示が安定しやすい傾向があります。急な相場変動が起きた場面でも、取引が薄い会社に比べて約定拒否やスリッページが発生しにくいと考えられています。一方で、取引高そのものはスプレッドの狭さや取引ツールの使いやすさ、カスタマーサポートの質を直接保証するものではありません。取引高だけを基準に選ぶと、他の使い勝手の面で不満が出ることもあるため、複数の指標と組み合わせて確認する姿勢が必要になります。
主要なFX口座比較サイトを見ると、口座開設数の推移や利用者アンケートによる人気ランキングを扱った記事は多く見つかりますが、取引高そのものを軸にした比較記事はほとんど見当たりません。背景には、取引高の開示が金融商品取引法上の義務ではなく、各社の任意開示にとどまっているという事情があります。そのため、比較サイトの多くは開示が確実な口座数や預かり資産を軸にランキングを作成していると考えられます。
今回対象としたのは、MATSUI FX、SBI FXトレード、楽天FX、FXダイレクトプラス、みんなのFX、LINE FX、外貨ネクストネオ、外貨ex、DMM FX、外為オンライン FX、LION FX、GMOクリック証券 FXネオの主要12社です。各社の公式サイトやIR資料、プレスリリースを確認したところ、取引高の開示状況は会社ごとに大きく異なっていました。円建ての売買代金を公表している会社もあれば、通貨の数量で公表している会社、取引高そのものは非公表でも第三者機関の実績認定を受けている会社、そもそも取引高に関する資料が見当たらない会社もあります。次の章から、この4つの区分に沿って12社を紹介します。
取引高(売買代金)を円建てで公表しているFX会社
12社のうち、取引高を円建ての売買代金として公表しているのはMATSUI FX、外貨ex、外為オンライン FXの3社です。3社とも金額の規模を把握しやすい一方、開示の頻度が月次と年次で異なるため、数値を比べる際は対象期間の違いに注意が必要です。
MATSUI FX(松井証券)
MATSUI FX(松井証券)は、月次の業績開示のなかでFXの売買代金を公表しています。2026年7月度(営業日数23日)の月間売買代金は約51.2兆円でした。松井証券は毎月月初に前月分の実績を更新しているため、比較的新しい数値を継続的に確認しやすい会社といえます。取引単位は1通貨から対応しており、少額から取引を始めたい人にも間口が広い設計になっています。
外貨ex(GMO外貨)
外貨ex(GMO外貨)は、親会社のGMOフィナンシャルホールディングスが月次の開示情報として売買代金を公表しています。2026年7月の月間売買代金は約38.3兆円でした。同じGMOグループには、取引高で世界的な実績を持つGMOクリック証券もありますが、外貨exとGMOクリック証券は別法人であり、それぞれ独立した実績として扱う必要があります。取引高の実績を根拠にグループ全体を一括りに評価してしまうと、実態とずれた理解になりかねません。
外為オンライン FX
外為オンライン FXは、年度単位で取引高を開示しています。2025年度の年間取引高は41兆9,400億円で、2024年度の50兆2,380億円、2023年度の57兆3,750億円と比べると減少傾向にあります。年度ごとの推移を確認できる点は、月次開示の2社にはない特徴です。単月の数値だけでは分からない中長期のトレンドを把握したい場合には、参考になる情報といえます。
会社名 | 対象期間 | 取引高 |
|---|---|---|
MATSUI FX(松井証券) | 2026年7月度 | 約51.2兆円 |
外貨ex(GMO外貨) | 2026年7月 | 約38.3兆円 |
外為オンライン FX | 2025年度 | 41兆9,400億円 |
表を見ると分かるとおり、MATSUI FXと外貨exは月間の数値、外為オンライン FXは年間の数値です。単純に金額の大小だけを比べると、月次開示の2社が圧倒的に大きく見えますが、これは対象期間が異なるためであり、そのまま優劣の判断材料にすることはできません。実際に比較する場合は、外為オンライン FXの年間取引高を12で割って月平均を算出するなど、期間をそろえたうえで確認する必要があります。
取引高を数量ベース(通貨単位)で公表しているFX会社
外貨ネクストネオとLION FXの2社は、取引高を円建てではなく通貨の数量で公表しています。円建ての3社とは尺度が異なるため、同じ表で単純に順位づけすることはできません。
外貨ネクストネオ(外為どっとコム)
外貨ネクストネオ(外為どっとコム)は、口座数・預り高とあわせて月次で取引数量を開示しています。2026年6月度の取引数量は252,825百万通貨でした。円建ての売買代金に換算するには、対象月の平均レートなど為替レートの前提が必要になります。前提となるレートの取り方によって換算結果に幅が生じるため、この記事では公表されている通貨単位のまま扱います。
LION FX(ヒロセ通商)
LION FX(ヒロセ通商)は、2007年から現在まで一貫して月次の取引高を「枚」という単位で開示しています。1枚は1万通貨にあたり、2026年6月度の取引高は54,328,416枚、通貨換算では約5,432.8億通貨でした。開示期間が20年近くに及ぶため、リーマンショックやコロナショックなど相場が大きく動いた局面での取引高の変化もさかのぼって確認できる点は、他社にはない特徴です。
数量ベースで開示している2社を円建ての数値と直接比較すると、実際の規模感を見誤るおそれがあります。例えば「252,825百万通貨」という数字だけを見ると、円建てで開示している会社の取引高より小さく見えるかもしれませんが、通貨の種類やレート水準によって円換算後の金額は大きく変わります。通貨単位のデータは、あくまで同じ通貨単位で開示している会社どうしの比較に使うのが安全です。
取引高は非公表だが世界的な実績認定があるFX会社
DMM FXとGMOクリック証券 FXネオは、取引高そのものの円建て数値は公表していないものの、第三者機関の調査で世界的な実績の認定を受けています。両社とも「世界一」という表現が使われることがありますが、根拠となる調査機関や対象年は異なるため、混同しないよう整理しておく必要があります。
DMM FX(DMM.com証券)
DMM FX(DMM.com証券)は、外国為替専門の調査会社Finance Magnatesの調査で、2025年の月間平均取引高が約1.463兆ドルとなり世界1位となりました。複数の比較サイトでは「4年連続世界1位」と紹介されていますが、DMM公式サイトでは2023年時点の実績としての記載にとどまっており、4年連続という表現の一次資料は今回の調査では確認できていません。
GMOクリック証券 FXネオ
GMOクリック証券 FXネオは、2021年(1月から12月)の年間FX取引高でギネス世界記録に認定されたことを、2023年12月に発表しています。同社は2021年の実績として、Finance Magnatesの調査でも世界1位を獲得しており、国内では10年連続の1位だったことをプレスリリースで明らかにしています。2006年10月のサービス開始以来、スプレッドの縮小や取引ツールの機能強化を継続してきたことが、長期的な取引高の実績につながっていると説明されています。
DMM FXとGMOクリック証券は、いずれもFinance Magnatesという同じ調査機関の年次ランキングを根拠にしていますが、世界1位を獲得した対象年が異なります。GMOクリック証券は2020年から2021年にかけての実績、DMM FXは2022年以降の実績で評価されており、同じ「世界一」という表現でも指している時期が違う点には注意が必要です。どちらか一方が現在も圧倒的に優位というわけではなく、調査対象の年によって順位が入れ替わってきたと理解するのが実態に近いといえます。
取引高データが非公表のFX会社と、代わりに確認すべき指標
SBI FXトレード、楽天FX、FXダイレクトプラス、みんなのFX、LINE FXの5社は、取引高そのものを公表資料の中で開示していません。開示していないことは、サービスの質が低いことを意味するわけではなく、各社が任意で開示範囲を決めた結果です。
SBI FXトレード
SBI FXトレードは、1通貨単位からの取引に対応し、1回の注文で最大1,000万通貨まで発注できるなど商品性の説明は充実していますが、取引高そのものの開示は確認できませんでした。
楽天FX
楽天FXは、2022年12月期の決算資料でFX売買代金が前年同期比で大きく伸びたことが示された時期がありますが、直近の具体的な数値は開示情報から確認できていません。
FXダイレクトプラス(セントラル短資FX)
FXダイレクトプラス(セントラル短資FX)は、開示情報のページで口座数と預り証拠金総額の推移は公表しているものの、取引高の項目は設けられていません。セントラル短資FX自体は2002年の設立ですが、親会社であるセントラル短資グループは前身企業も含めると一世紀以上の歴史を持ちます。取引高に関しては、グループの歴史の長さにかかわらず非公表です。
みんなのFX(トレイダーズ証券)
みんなのFX(トレイダーズ証券)も同様に、口座数と預かり資産の推移は公表していますが、取引高は開示されていません。
LINE FX
LINE FXはサービス自体は継続していますが、取引高に関する公表資料は見当たりませんでした。
取引高が非公表の会社を検討する場合は、各社が公表している口座数や預かり資産の推移を確認する方法があります。口座数の増減は、新規に口座を開く人がどれだけいるかを示す指標であり、預かり資産の推移は既存の利用者がどれだけ資金を預けているかを示す指標です。あわせて、スプレッドやスワップポイントの水準、オリコン顧客満足度調査などの第三者評価を組み合わせて確認すると、取引高の情報がなくても会社の実態に近づきやすくなります。取引高という1つの指標だけに頼らず、複数の情報源を照らし合わせることが、実態に近い判断につながります。
まとめ
FX会社の取引高は、開示している会社としていない会社があり、開示している場合も円建てと数量ベースで単位が異なります。MATSUI FX、外貨ex、外為オンライン FXは円建ての売買代金を公表しており、外貨ネクストネオとLION FXは通貨の数量で公表しています。DMM FXとGMOクリック証券は取引高の円建て数値こそ非公表ですが、第三者機関の調査による世界的な実績を持っています。残るSBI FXトレード、楽天FX、FXダイレクトプラス、みんなのFX、LINE FXの5社は取引高を公表していないため、口座数や預かり資産、スプレッドなど他の指標とあわせて検討する必要があります。
取引高は、FX会社の実態を知るための有力な手がかりの1つですが、それだけで良し悪しを決められるものではありません。開示している会社の数値を確認するときは対象期間や単位をそろえたうえで比較し、非公表の会社については口座数やスプレッドなど別の指標で補うことで、自分の取引スタイルに合った口座を選びやすくなります。
免責事項
この記事は、各FX会社が公表している資料をもとに情報提供を目的として作成したものであり、特定の金融商品の取引を勧誘するものではありません。掲載している数値は執筆時点で確認できた公表資料に基づくものであり、最新の数値とは異なる場合があります。FX取引は元本や利益が保証された金融商品ではなく、為替相場の変動により預けた証拠金を上回る損失が生じる可能性があります。実際に取引を行う際は、各社の公式サイトで最新の情報を確認したうえで、ご自身の判断と責任において行ってください。

