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扶養の壁は103万から160万へ?2025年改正と共働き世帯手取りの最適解
税金・制度公開日: 2026/03/03

扶養の壁は103万から160万へ?2025年改正と共働き世帯手取りの最適解

「パート収入を増やしたいけれど、扶養から外れるとかえって世帯の手取りが減るのでは?」 「103万、106万、130万……結局、いくらまで働くのが一番損をしないの?」

共働き世帯において、このような「働き損」に対する不安は尽きません。特に、収入アップを目指して働く時間を増やした結果、税金や社会保険料の負担で手元に残るお金が減ってしまう事態は、家計を管理するうえで避けたいものです。

この悩みの原因は、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」という2つの異なるルールが混在している点にあります。さらに、令和7年(2025年)の税制改正により、長年意識されてきた「103万円の壁」が大きく変わろうとしています。

本記事では、最新の税制改正と社会保険の適用拡大の動きを踏まえ、代表的な「〇〇万円の壁」の仕組みを整理します。単なる制度解説にとどまらず、世帯手取りで見たときの影響と、中長期的な視点での働き方・年収設計の考え方について、具体的なデータをもとに解説します。

結論

先に本記事の結論をお伝えします。

  • 「103万円の壁」は実質的に引き上げへ。税金より「社会保険」を意識すべき:令和7年度税制改正により、基礎控除等が引き上げられ、非課税ラインは実質160万円程度になる見込みです。今後は「税金の壁」よりも、手取りへの影響が大きい「社会保険の壁(106万・130万)」が判断の基準になります。
  • 「壁」を意識しすぎた労働抑制は、将来の機会損失になる:目先の手取り減少(働き損)を避けるために仕事をセーブし続けると、将来受け取れる厚生年金の増額メリットや、キャリアアップによる昇給のチャンスを逃す可能性があります。
  • 損得は「年単位の手取り」と「将来の年金・保障」のセットで判断する:社会保険料は掛け捨てではありません。厚生年金への加入は、将来の年金受給額を増やし、万が一の際の傷病手当金などの保障を手厚くします。

出口戦略:ご自身の世帯年収や勤務時間を入力し、現在の働き方が「どの壁」に該当するか、また扶養を外れた場合に手取りがどう変化するかを確認できるシミュレーターを活用し、具体的な数字を把握することをおすすめします。

代表的な「扶養のライン」の整理(2025年改正対応版)

「扶養」には大きく分けて「税金」と「社会保険」の2種類があります。これらを混同しないことが理解の第一歩です。

税法上の扶養(配偶者控除・配偶者特別控除)

税法上の扶養は、家族を養っている納税者(例:夫)の税負担を軽くする仕組みです。これまでの常識であった「103万円」のラインは、令和7年度税制改正により大きく変化します。

従来の103万円ライン(〜令和6年まで) 

基礎控除48万円 + 給与所得控除55万円 = 103万円。これを超えると所得税がかかり始めました。

【重要】新たな非課税ライン(令和7年改正〜) 令和7年度税制改正により、以下の通り控除額が引き上げられます。

  • 基礎控除:合計所得金額132万円以下の場合、95万円(改正前48万円)へ引き上げ。
  • 給与所得控除:最低保障額が65万円(改正前55万円)へ引き上げ。
  • 合計:160万円程度のライン これらを合わせると、年収約160万円までは所得税がかからず、扶養控除の対象となる見込みです。「103万円を超えたら税金がかかる」という常識は過去のものとなりつつあります。

出典:国税庁|令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について

社会保険上の扶養(健康保険・年金)

手取りに大きく影響するのがこちらです。扶養から外れると、給与の約14〜15%程度の社会保険料負担が発生します。こちらは適用対象が「拡大(加入しやすくなる)」方向に進んでいます。

106万円の壁(特定適用事業所の場合)

週20時間以上の勤務等の条件を満たす場合、年収約106万円(月額8.8万円)以上で社会保険への加入義務が発生します。

  • 適用拡大の流れ:現在、従業員数51人以上の企業が対象ですが、今後はこの企業規模要件が段階的に撤廃され、小規模な事業所でも加入対象となる法改正が進んでいます。

130万円の壁(一般的な被扶養者ライン)

勤務先の規模に関わらず、年収130万円以上になると、すべての人が配偶者の社会保険の扶養から外れます。

出典:厚生労働省|社会保険の加入対象の拡大について

図表イメージ:どのラインを超えると何が変わるか(改正後イメージ)

年収ライン

税金(所得税・住民税)

社会保険(健保・年金)

夫の手取り影響

〜106万円

非課税

扶養内(負担なし)

配偶者控除あり

106万円〜

非課税

条件により加入(約15%負担)

配偶者控除あり

130万円〜

非課税

必ず加入(約15%負担)

配偶者控除あり

160万円〜

課税発生

加入

控除の変動開始

※上記は令和7年度改正案に基づく概算です。

よくある“扶養の噂”や誤解の真偽を検証

代表的な誤解1:「年収103万円を1円でも超えたら大損」

検証:誤りです。 これまでは103万円を超えると本人に税金が発生しましたが、その額は少額でした。さらに、前述の通り税制改正により非課税枠が160万円程度まで拡大するため、103万円を超えても税負担は発生しなくなります。夫側の配偶者控除も、妻の年収が上がっても一定額までは「配偶者特別控除」が適用されるため、急激に損をする可能性は低いと言えるでしょう。

代表的な誤解2:「130万円を超えたら必ず損」

検証:短期的な手取りでは減少しますが、「必ず損」とは言い切れません。 130万円を超えて社会保険料(年収の約15%)を払うようになると、手取り額が130万円未満の時よりも減ってしまう「働き損」の現象が起きます。 しかし、厚生年金に加入することで以下のメリットが生まれます。

  • 将来の年金増額:国民年金(基礎年金)に加え、報酬比例の厚生年金を受け取れます。
  • 保障の充実:病気や怪我で働けなくなった際の「傷病手当金」や「出産手当金」の受給が可能になります。

代表的な誤解3:「パート先が小さい会社なら社会保険に入らなくて済む」

検証:今後は通用しなくなる可能性が高いです。 これまでは従業員数51人以上の企業が社会保険の強制加入対象でしたが、政府の方針により、この企業規模要件は撤廃される方向で決定しています。将来的には、週20時間以上働くパート・アルバイトであれば、会社の規模に関わらず社会保険加入がスタンダードになります。

データ比較(モデル世帯別の手取りシミュレーション)

ここでは、改正後の税制と社会保険料率を考慮し、年収の変化が世帯手取りにどう影響するかを比較します。

モデル世帯:夫(年収500万円・正社員)、妻(パート勤務)

パターン別:妻の年収と世帯への影響

1. 妻年収 100万円(扶養内・社会保険なし)

  • 税金:なし(改正後基準)
  • 社保負担:なし
  • 妻の手取り:100万円
  • 特徴:負担ゼロで効率が良いが、将来の厚生年金上積みはない。

2. 妻年収 125万円(106万の壁適用の場合)

  • 税金:なし(改正後基準)
  • 社保負担:約18万円(年金・健保)
  • 妻の手取り:約107万円
  • 特徴:「働き損」発生ゾーン。 額面は25万円増えたが、手取りは7万円しか増えない。ただし、厚生年金加入の実績は積まれる。

3. 妻年収 150万円(社保加入・税金なし)

  • 税金:なし(改正後基準)
  • 社保負担:約22万円
  • 妻の手取り:約128万円
  • 特徴:手取り額が130万円の壁の手前(129万円)とほぼ同等に戻るライン。ここを超えて働けば、明確に手取りが増え始める。

4. 妻年収 200万円(壁を完全に突破)

  • 税金:あり(所得税・住民税)
  • 社保負担:約30万円
  • 妻の手取り:約160万円以上
  • 特徴:世帯年収が明確にアップする。老後の年金受給額も有意に増加する。

シミュレーションからの示唆

これまでは「130万円の壁」を避けるために労働時間を調整する人が多くいましたが、税の壁が160万円まで後退することで、「社会保険料を払ってでも、160万円ギリギリ(税金がかからない範囲)まで働く」という選択肢が合理的になるケースが増えます。 また、政府は「年収の壁・支援強化パッケージ」等で、手取り減少を補填する企業への助成も行っています。

参考:厚生労働省|年収の壁・支援強化パッケージ

働き方のパターンを紹介

これまでの整理を踏まえ、ご家庭の状況に合わせた働き方の選び方を提案します。

パターンA:子育て・家庭優先型(週20時間未満)

【向いている人】

子どもが小さく、急な発熱などで勤務調整が必要な方。

【戦略】

  • 労働時間を週20時間未満に抑える。
  • これにより、会社の規模や年収に関わらず、社会保険の加入対象外となります。
  • 税制改正により、年収そのものは以前より気にしなくて良くなる(160万円までは非課税)ため、時給の高い職場で短時間働くのが最も効率的です。

パターンB:キャリア・将来資金重視型(壁突破・フルタイム)

【向いている人】

子育てが一段落した方、老後資金や住宅ローン返済のために世帯収入を最大化したい方。

【戦略】

  • 扶養の範囲を気にせず、年収160万円以上、できれば正社員並みのフルタイムを目指す。
  • 社会保険(厚生年金・健康保険)に加入し、将来の「基礎年金+厚生年金」の2階建て受給を確保する。
  • 企業規模要件の撤廃を見据え、早めに社会保険完備の職場へシフトすることで、キャリアの継続性を高める。

まとめ

「1円も損したくない」と労働時間を極端に抑えることは、ご自身のキャリア構築の機会や、将来受け取れる年金の増額チャンスを自ら捨てていることにもなりかねません。 特にこれからの制度改正は、パート労働者の社会保険加入を促進し、将来の貧困を防ぐ方向に進んでいます。

「今の月々の手取り」と「老後の安心」、 どちらを優先するかをパートナーと話し合い、新しい制度のもとで最適な年収ゾーンを選択してみてください。


ここまで読んで、少しでも「自分は大丈夫だろうか」と感じた方へ。

将来の不安は見えないことから生まれます。逆に言えば、今の状況が整理できるだけでも、次に何をすべきかは見えてきます。あなたの収入・支出・貯蓄状況をもとに、今の立ち位置をチェックしてみませんか?

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【免責事項】 本記事は執筆時点の情報に基づき作成していますが、今後の法改正により内容が変更となる可能性があります。内容は一般的な制度解説であり、個別の税額計算や金融商品の勧誘を行うものではありません。具体的な手続きは税務署や専門家にご相談ください。情報の利用による損害について、当社は一切の責任を負いかねます。