年末調整の時期になると、生命保険料控除で「結局いくら戻るのか」が気になることがあります。保険料控除証明書で払った保険料は分かっても、手元に戻るお金や翌年の住民税にどう影響するかは、計算しないと見えてきません。
2026年分からは、23歳未満の扶養親族がいる場合に、所得税の一般生命保険料控除の上限が上がる特例も始まりました。
ここでは、国税庁などの公式情報をもとに、所得税と住民税それぞれの控除額の計算方法と、保険料別・税率別に戻る額の目安を早見表で整理します。
結論|戻る額は「控除額×税率」。所得税と住民税を分けて計算する
生命保険料控除は、支払った保険料の一部を所得から差し引き、税金を軽くする仕組みです。払った保険料がそのまま戻るわけではありません。
戻る額の目安は「控除額×税率」です。所得税と住民税は控除額も税率も違うため、分けて計算します。
- 所得税:区分ごとの控除額は最高4万円(旧制度は5万円)、3区分の合計は最高12万円
- 住民税:区分ごとの控除額は最高2万8千円(旧制度は3万5千円)、合計は最高7万円
- 所得税の税率は「課税される所得金額」で5%〜45%、住民税の所得割は標準で10%
- 2026年分・2027年分は、23歳未満の扶養親族がいると所得税の一般の上限が6万円
- 住民税は前年の所得で計算されるため、2026年分の控除は2027年度の住民税に反映される
年間保険料(新制度・1区分) | 所得税の軽減(税率10%) | 住民税の軽減(10%) | 合計の目安 |
|---|---|---|---|
4万円 | 3,000円 | 2,400円 | 5,400円 |
8万円 | 4,000円 | 2,800円 | 6,800円 |
12万円 | 4,000円 | 2,800円 | 6,800円 |
表は、所得税率10%の人が新制度の保険を1区分だけ契約している場合の目安です。所得税は本税のみで、復興特別所得税を含めると約2.1%増えます。
生命保険料控除の仕組み|3つの区分と新制度・旧制度
生命保険料控除には、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つの区分があります。区分ごとに控除額を計算し、その合計が所得から差し引かれます。
契約した時期によって、計算のルールも変わります。国税庁「No.1140 生命保険料控除」によると、2012年(平成24年)1月1日以降に結んだ契約は新制度で計算します。2011年(平成23年)12月31日以前の契約は旧制度です。旧制度には介護医療保険料控除の区分がありません。
どの区分の、新旧どちらの契約かは、保険会社から届く生命保険料控除証明書に書かれています。計算の前に、証明書で区分と年間の保険料を確かめます。
ITトレンドMoney編集部は2025年に、全国の会社員・生活者5,146名を対象にWebアンケートを行いました。節税対策に「既に取り組んでいる」と答えた2,024名のうち、65.8%が生命保険料控除を利用していました(複数回答)。
調査の詳細は【独自調査】5,146人の節税実態|NISA71%・生命保険料控除66%が二強をご覧ください。
控除額の計算方法|所得税と住民税の計算表
控除額は、区分ごとの年間の保険料を次の表に当てはめて計算します。所得税と住民税では使う表が違います。
新制度(2012年1月1日以降の契約)
年間の保険料 | 所得税の控除額 |
|---|---|
2万円以下 | 保険料の全額 |
2万円超4万円以下 | 保険料×1/2+1万円 |
4万円超8万円以下 | 保険料×1/4+2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
年間の保険料 | 住民税の控除額 |
|---|---|
1万2千円以下 | 保険料の全額 |
1万2千円超3万2千円以下 | 保険料×1/2+6千円 |
3万2千円超5万6千円以下 | 保険料×1/4+1万4千円 |
5万6千円超 | 一律2万8千円 |
旧制度(2011年12月31日以前の契約)
年間の保険料 | 所得税の控除額 |
|---|---|
2万5千円以下 | 保険料の全額 |
2万5千円超5万円以下 | 保険料×1/2+1万2,500円 |
5万円超10万円以下 | 保険料×1/4+2万5千円 |
10万円超 | 一律5万円 |
年間の保険料 | 住民税の控除額 |
|---|---|
1万5千円以下 | 保険料の全額 |
1万5千円超4万円以下 | 保険料×1/2+7,500円 |
4万円超7万円以下 | 保険料×1/4+1万7,500円 |
7万円超 | 一律3万5千円 |
所得税の表は国税庁「No.1140 生命保険料控除」、住民税の表は調布市「住民税の所得から差し引かれる金額」によります。
新旧両方ある場合と、合計の上限
同じ区分に新制度と旧制度の両方の契約がある場合、所得税では、旧制度の保険料が6万円を超えるときは旧制度だけで計算した控除額(最高5万円)を使えます。6万円以下のときは、新旧それぞれの控除額を合計でき、上限は4万円です。23歳未満の扶養親族がいる場合の一般生命保険料控除では、この上限が6万円になります(次の章で説明します)。
3つの区分の控除額を合計したときの上限は、所得税が12万円、住民税が7万円です。住民税は1区分の上限2万8千円を3区分そろえると8万4千円になりますが、合計の上限7万円で頭打ちになります。
2026年分の特例|23歳未満の扶養親族がいると一般の上限が6万円
2026年分からは、23歳未満の扶養親族がいる場合、所得税の新制度の一般生命保険料控除を、次の表で計算します。国税庁「No.1140 生命保険料控除」に掲載されている計算表です。
年間の保険料(新制度・一般) | 所得税の控除額(特例) |
|---|---|
3万円以下 | 保険料の全額 |
3万円超6万円以下 | 保険料×1/2+1万5千円 |
6万円超12万円以下 | 保険料×1/4+3万円 |
12万円超 | 一律6万円 |
特例で上限が上がるのは、所得税の「新制度の一般生命保険料控除」だけです。住民税と、3区分の合計上限12万円は変わりません。
生命保険文化センターは、この特例を2026年・2027年分の所得税の時限措置としています。2027年分への延長は、財務省「令和8年度税制改正の大綱」で「適用期限を1年延長」とされたものです。
介護医療保険料控除と個人年金保険料控除は、扶養親族の有無にかかわらず従来どおりの計算です。このため、ほかの区分ですでに合計12万円に近い控除を受けている場合は、特例で一般の控除額が増えても、戻る額は増えないことがあります。
いくら戻るかの計算|保険料別・税率別の早見表
所得税:税率は「課税される所得金額」で決まる
所得税の税率は、年収そのものではなく「課税される所得金額」で決まります。国税庁「No.2260 所得税の税率」によると、課税される所得金額が195万円未満は5%、195万円以上330万円未満は10%です。330万円以上695万円未満は20%で、最高は45%です。
税率はその年の課税される所得金額で決まります。前年と収入や控除が大きく変わらなければ、前年の課税される所得金額から税率の見当をつけられます。分からない場合は、勤務先の担当者や税務署に確認できます。
年間保険料(新制度・1区分) | 控除額 | 税率5% | 税率10% | 税率20% |
|---|---|---|---|---|
2万円 | 2万円 | 1,000円 | 2,000円 | 4,000円 |
4万円 | 3万円 | 1,500円 | 3,000円 | 6,000円 |
6万円 | 3万5千円 | 1,750円 | 3,500円 | 7,000円 |
8万円以上 | 4万円 | 2,000円 | 4,000円 | 8,000円 |
23歳未満の扶養親族がいる場合の一般生命保険料控除は、特例の計算表で控除額が変わります。
年間保険料(特例・一般) | 控除額 | 税率5% | 税率10% | 税率20% |
|---|---|---|---|---|
4万円 | 3万5千円 | 1,750円 | 3,500円 | 7,000円 |
8万円 | 5万円 | 2,500円 | 5,000円 | 1万円 |
12万円以上 | 6万円 | 3,000円 | 6,000円 | 1万2千円 |
表の金額は所得税の本税だけです。2026年分は、所得税と併せて原則として基準所得税額の2.1%の復興特別所得税を納めるため、実際に軽くなる額は表の約1.021倍になります。
住民税:所得割の税率10%で計算する
住民税の所得割の税率は、総務省「個人住民税」によると標準で10%です。住民税の控除額に10%を掛けると、軽くなる額の目安になります。
年間保険料(新制度・1区分) | 住民税の控除額 | 軽くなる額の目安(10%) |
|---|---|---|
2万円 | 1万6千円 | 1,600円 |
4万円 | 2万4千円 | 2,400円 |
6万円以上 | 2万8千円 | 2,800円 |
住民税は前年の1月1日から12月31日までの所得で計算されます。2026年分の生命保険料控除は、2027年度の住民税が下がる形で反映され、年末調整で現金が戻るわけではありません。自治体が独自の税率を定めている場合もあるため、正確な額は住んでいる自治体の税額通知で確かめます。
計算例
以下はいずれも、所得税率10%・新制度の契約の場合の目安です。所得税は本税のみで計算しています。
ケース | 所得税の控除額 | 住民税の控除額 | 軽くなる額の目安 |
|---|---|---|---|
一般8万円+介護医療6万円 | 4万円+3万5千円=7万5千円 | 2万8千円+2万8千円=5万6千円 | 所得税7,500円+住民税5,600円=1万3,100円 |
一般12万円のみ(23歳未満の扶養親族あり) | 6万円(特例なしなら4万円) | 2万8千円 | 所得税6,000円+住民税2,800円=8,800円 |
一般12万円+介護医療8万円+個人年金8万円(23歳未満の扶養親族あり) | 6万円+4万円+4万円=14万円→上限12万円 | 2万8千円×3=8万4千円→上限7万円 | 所得税1万2千円+住民税7,000円=1万9千円 |
3つ目の例では、特例がなくても所得税の控除額は4万円×3区分で12万円になります。合計の上限に届いているため、特例による上乗せは戻る額に影響しません。
年末調整・確定申告での手続き
会社員は、勤務先に申告して年末調整で控除を受けられます。年末調整で控除を受けた分は、確定申告で改めて証明書類を出す必要はありません。提出の方法は勤務先の案内に沿います。
自営業の方や、年末調整で申告し忘れた方は、確定申告書の生命保険料控除の欄に記入し、証明書類を添付するか提示して申告します。申告先が所轄税務署または勤務先であることを含め、国税庁「No.1140 生命保険料控除」に記載されている手続きです。
23歳未満の扶養親族がいる場合の特例を含め、申告書の書き方は勤務先や国税庁の案内で確認してください。
控除のために保険に入るべき?|戻る額と保険料を比べる
早見表のとおり、所得税率10%の人が新制度の保険料を年間8万円払っても、所得税と住民税で軽くなる額の目安は合わせて6,800円です。控除で戻る額は払った保険料より小さいため、控除のためだけに保険に入ると、手元のお金は減ります。
保険は、万一のときの保障が必要かどうかで判断し、控除はその結果として受けられるもの、と考えると判断がぶれません。すでに入っている保険の控除を申告し忘れていないかを確かめることが、まず取り組める節税です。
ITトレンドMoney編集部が2025年に全国の個人592名に行ったWebアンケートでは、90.9%が保険に「すでに加入している」と答えました。一方、先に紹介した節税の調査では、節税対策をしていない3,122名のうち40.6%が、その理由に「自分は対象じゃないと思っている」を挙げています(複数回答)。
控除の対象になる保険に入っている会社員は、年末調整で申告すれば控除を受けられます。対象かどうかは、保険会社から届く生命保険料控除証明書で確かめられます。保険の見直しを考えている場合は、固定費の見直しは何から?6項目の順番と、解約・乗り換え前の確認点で保険料の見直し方も紹介しています。
生命保険料控除でよくある質問
Q. 生命保険料控除で、払った保険料はいくら戻りますか?
払った保険料がそのまま戻るわけではありません。軽くなる税金の目安は「控除額×税率」です。所得税率10%の人が新制度の保険料を1区分で年間8万円払った場合、所得税4,000円と住民税2,800円の合計6,800円が目安です。
Q. 住民税はいつ安くなりますか?
住民税は前年の所得で計算されるため、2026年分の控除は2027年度の住民税に反映されます。年末調整で戻るのは所得税の分です。
Q. 23歳未満の扶養親族がいれば、控除の合計も増えますか?
増えるのは所得税の新制度の一般生命保険料控除の上限(4万円から6万円)だけです。3区分の合計の上限12万円と、住民税の控除額は変わりません。
Q. 年末調整で申告し忘れた場合はどうなりますか?
確定申告で生命保険料控除を申告できます。確定申告書の生命保険料控除の欄に記入し、生命保険料控除証明書を添付するか提示します。
Q. 年収からすぐに戻る額は分かりますか?
所得税の税率は年収ではなく「課税される所得金額」で決まるため、年収だけでは正確に分かりません。前年の確定申告書などで課税される所得金額を確かめ、税率を当てはめて計算します。
まとめ|控除証明書の金額から、所得税と住民税を分けて計算する
生命保険料控除で軽くなる税金は「控除額×税率」で、所得税と住民税では控除額の表も上限も違います。所得税の合計上限は12万円、住民税は7万円です。
2026年分・2027年分は、23歳未満の扶養親族がいると所得税の一般生命保険料控除の上限が6万円になりますが、合計の上限は変わりません。
次のステップは、手元の生命保険料控除証明書で区分と年間の保険料を確かめ、年末調整の申告書に漏れなく記入することです。
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出典(公的機関・業界団体):国税庁「No.1140 生命保険料控除」、国税庁「No.2260 所得税の税率」、総務省「個人住民税」、調布市「住民税の所得から差し引かれる金額」、生命保険文化センター「税金の負担が軽くなる『生命保険料控除』」、財務省「令和8年度税制改正の大綱」
出典(調査):ITトレンドMoney編集部 独自調査(各調査の概要は本文に記載)
免責事項:本記事は情報提供を目的としており、税務上の助言や特定の保険商品の勧誘・推奨を行うものではありません。掲載している制度の内容は記事執筆時点(2026年10月)の法令等に基づくもので、税制改正により変更される場合があります。控除額や税額は個人の所得や契約内容、お住まいの自治体によって異なるため、詳しくは所轄の税務署、お住まいの自治体、または税理士にご確認ください。

